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脳外傷による高次脳機能障害の後遺障害認定について

脳外傷による高次脳機能障害とは

 脳外傷による高次脳機能障害とは、自動車事故により脳が損傷されたために、記憶・記銘力障害、集中力障害、遂行機能障害、判断力低下などの認知障害や、感情易変、不機嫌、攻撃性、暴言・暴力、幼稚、羞恥心の低下、多弁(饒舌)、自発性・活動性の低下、病的嫉妬、被害妄想などの人格変化等を典型的な症状とする障害であり、仕事や日常生活に支障を来します。また、半身の運動麻痺や起立・歩行の不安定などの神経症状を伴うことがあるとされています。

 自賠責保険(共済)では、脳外傷による高次脳機能障害であると認定されれば、その症状に応じ、自動車損害賠償保障法(自賠法)施行令別表第一および別表第二に定める後遺障害等級のいずれかに該当するものとして、取り扱っています。その際、高次脳機能障害に合併した運動マヒなどの神経症状も十分に考慮します。

請求手続と必要資料をご案内したリーフレットはこちらです。
脳外傷による高次脳機能障害の後遺障害認定について(リーフレット) 232KB]


「自賠責保険における高次脳機能障害認定システム(※1)検討委員会」報告書について

 当機構においては、自賠責保険での「脳外傷による高次脳機能障害」に関する後遺障害認定について、2000(平成12)年から検討を開始し、認定システムを確立するとともに、2001(平成13)年から実施・運営してまいりました。
 その後、2003(平成15)年、2007(平成19)年と認定システムの見直し・充実を図りましたが、前回の見直しから3年以上が経過していること、および、現行の認定システムでは認定されないものが存在するなどの指摘もあることを受けて、2010(平成22)年7月、国土交通省から当機構に対して、再検討が指示されました。
 これを受けて、当機構に「自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会」を設置し、一層の損害賠償の保障の充実に資するべく、認定システムに係る問題の有無等を検討いたしました。
 検討結果の概要は以下のとおりです。当機構では、検討結果に沿った体制整備を実施し、2011(平成23)年4月から見直し後の認定システムを運用する予定です。

<検討結果の概要>
1.「脳外傷による高次脳機能障害」の医学的な考え方の整理
(1)軽症頭部外傷(※2)後の高次脳機能障害
 WHOの報告(MTBI(※3)に関する2004年以前の医学論文の系統的レビューを踏まえた診断基準や考察)を参考にするとともに、それ以外にも内外の各種文献、外部専門家の意見陳述や委員による軽症頭部外傷患者の臨床例等も踏まえると、@MTBIの受傷直後に把握される障害は、大多数の患者で3か月から1年以内に回復する、A一部の患者で症状が遷延することがあるが、心理社会的因子の影響によるという考え方が有力、とされていること等から、軽症頭部外傷後に1年以上回復せずに遷延する症状については、それがWH0の診断基準を満たすMTBIとされる場合であっても、それのみで高次脳機能障害であると評価することは適切ではない。
  ただし、軽症頭部外傷後の脳の器質性損傷の可能性を完全に否定できないという医学論文も存在することから、このような事案における高次脳機能障害の判断は、症状の経過、検査所見等も併せ慎重に検討されるべきである。

(2)脳機能の客観的把握(画像診断の進歩について)
 脳の器質的損傷の判断にあたっては、従前と同じくCT、MRIが有用な資料であると考える。ただし、これらの画像も急性期から亜急性期の適切な時期において撮影されることが重要である。
 なお、CT、MRIで異常所見が得られていない場合に、拡散テンソル画像(DTI)、fMRI、MRスペクトロスコピー、PETで異常が認められたとしても、それらのみでは、脳損傷の有無、認知・行動面の症状と脳損傷の因果関係あるいは障害程度を確定的に示すことはできない。

2.現行認定システムの修正等
(1)審査の対象とする条件の明確化
 高次脳機能障害事案として審査の対象を選定するための現行の5条件については、意識障害や画像所見など一部の条件に達しない被害者は、現場の医師に高次脳機能障害ではないと形式的に判断されているおそれがあるのではないかとの指摘があったことから、軽症頭部外傷の被害者が審査対象から漏れることのないよう記載方法を修正する。
(2)調査手法の改善
 脳外傷による高次脳機能障害を的確に後遺障害等級認定するためには、意識障害の程度・期間を適切に把握することが重要であることから、照会様式の一部改正を行う。
(3)症状固定時期の考え方
 被害者が学齢期前の小児の場合、その成長・発達に伴い、社会的適応に問題があることが明らかになることで、被害者に有利な等級認定が可能となる場合もあることから、そのような要素があると考えられる事案については、社会的適応障害の判断が可能となる時期まで後遺障害等級認定を待つという考え方もあることを周知することが望ましい。

※1 「高次脳機能障害認定システム」とは、「高次脳機能障害が問題となる事案」について、
  ・診療医に対する受傷後の詳細な意識障害の推移
  ・高次脳機能障害の内容・程度の照会
  ・被害者側への日常生活状況の確認 等
  詳細な情報を得た上で、専門医を中心とする自賠責保険(共済)審査会高次脳機能障害専門部会が後遺障害等級を認定するシステムです。

※2 「軽症頭部外傷」とは、「頭部に何らかの外力が加わった事故のうち軽度なもの」を言います。
  (なお、本用語の定義は、報告書で使用する場合の定義となります。)

※3 「MTBI(Mild Traumatic Brain Injury)」とは、WHO(世界保健機関)共同特別専門委員会の診断基準によれば、以下のとおりとなります。
【WHOにおけるMTBIの診断基準】(訳は当検討委員会)
 MTBIは、物理的外力による力学的エネルギーが頭部に作用した結果起こる急性脳外傷である。
   臨床診断のための運用上の基準は以下を含む:
 (@)以下の一つか、それ以上:混乱や失見当識、30分あるいはそれ以下の意識喪失、24時間
  以下の外傷後健忘期間、そして/あるいは一過性の神経学的異常、たとえば局所神経徴候、
  けいれん、手術を要しない頭蓋内病変
 (A)外傷後30分の時点あるいはそれ以上経過している場合は急患室到着の時点で、グラスゴ
  ー昏睡尺度得点は13−15
   上記のMTBI所見は、薬物・酒・内服薬、他の外傷とか他の外傷治療(たとえば全身の系統
  的外傷、顔面外傷、挿管など)、他の問題(たとえば心理的外傷、言語の障壁、併存する医
  学的問題)あるいは穿通性脳外傷などによって起きたものであってはならない。


自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会報告書(2011年3月) 441KB]

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